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豆腐

まだ夏じゃない

fragments

―魔王さん、今日はよろしくお願いします。

「あ、どうも、よろしくお願いします」

―今回魔王さんによる『世界征服宣言』が大きな反響を呼んでいることはご存知でしょうが、そのあたりについてお話を頂けないかと思いまして。

「ああ、はい(笑)。いやあ、人間のみなさんが驚いてくれたのはもちろん嬉しかったんですが、魔王軍の連中も驚いちゃって(笑)」

―突然でしたからね(笑)。魔王さんがああいう宣言をするというのは、ええと……

「そうですねぇ、前に封印されたのが300年くらい前で、復活したのがそれから200年くらい後だから、500年ぶり……くらいですかね、たぶん」

―人間は当然として、魔王軍のみなさんも寝耳に水だったと。

「はい。本当はもうすこし布石というか、伏線を用意しておきたかったんですけど、つい寝起きのテンションで(笑)」

―なるほど(笑)。しかしあの超広域魔法による征服宣言、あれはインパクトありましたよ。

「本当は人間のみなさんひとりひとりにメールでも送れば楽なんですけどね。ほら、続きはwebで! みたいな感じで。サイトを用意しておけば、進捗なんかも確認しやすいし」

―いやあ、でもあればすごかったですよ。突然空が暗くなったと思ったら脳内に魔王さんの声が響いて、それから上空に……

「いきなり雷撃と爆炎ですからね、ちょっと派手すぎたかなって、今になって思います。悪魔神官たちにも嫌味いっぱい言われたし(笑)」

―はははは!

「『やりすぎだろ!』って。怒るとあいつらほんと怖いんですよ……」

―魔王さんともあろう方がマジ切れされる!(笑)

「いやあ、大人になってから真剣に怒られると、ほんとヘコミますよ(笑)」

―なるほど(笑)、ところで今回の征服宣言ですが……

「ああ、その話でしたね」

―いやいや、忘れないでくださいよ(笑)。ええと、宣言によると、大きく2つの公約というか、目標があるとのことでしたが、まず最初は「人類との全面戦争」と。

「はい」

―これは文字通り、人類と魔族が雌雄を決するという?

「そうですそうです、あれです、殺し合いです」

―身も蓋もないですねぇ……(笑)

「ええ、まあ(笑)。一応魔王なので……」

―そうですね(笑)、それから、2つ目は、勇者さんたちとの直接対決とのことですが……

「はい、ええと、前回は勇者さんの伝説の剣でやられちゃったんですけど……」

―それは3代目勇者さんですか?

「私が封印されたあとに新しい勇者さんが現れていなければそうですね……あの剣を受けたのは初めてではなかったんですけど、結局剣って、使い手の腕によって、大きく効果が変化するんですよ」

―ええ。魔法効果があったりしますね。

「そうですね、はい。それで、あのときは、私達魔族に対して大きな効果を発揮する、精霊の加護が付与されてまして」

―ああ、それは強力そうですね。

「メッチャ痛かったです」

―あははは!(爆笑)

「だって勇者さんたちは4人で、こっちは私だけだったんですよ。あのときはもう魔王軍はボロボロだったし、私を助けてくれる部下もいなかったし……ほぼリンチでしたね」

―それはキツイですね。

「キツイなんてもんじゃなかった(笑)。だってもう最期のほうは、なんて言って倒れたらカッコいいかな〜って、それだけ考えてましたもん」

―苦労してますねー(笑)

「ええ、ホントに(笑)。でも今回は、ちょっと秘密というかサプライズが――」

―お、あるんですか?

「……あったらいいなあ」

―ないんですか!

「いや、ほら、今それ言っちゃうとマズイでしょう(笑)。でも、今回は、勇者さんたちも、ちょっと驚くんじゃないかな」

―なるほど。今はまだ秘密ということですね。楽しみです。

「まあ、なんていうか、ね。そうそう何度も倒されるわけにもいかないんで」

―魔王としての誇りというか、プライドが?

「それもあるんですけど、ほら、何百年も寝てると、腰とかが……(苦笑)」

―うわ、リアルな話ですね……

「さっき寝起きで征服宣言したって言いましたけど、今回も身体的にはけっこうつらかったんですよ。肩とか腰はバリバリしてるし、寝癖つきまくってるし」

―部下のみなさんにはちょっと見せられない姿だったと。

「速攻シャワー浴びましたもん。ガス止まってたから水しか出なかったけど」

―そこは魔法でもなんでも使えばよかったんじゃ……

「あ」

―「あ」って(笑)

「まあいいじゃないですか(笑)」

―(笑)そういえば今回の征服宣言にともなって、人間側は魔王討伐軍が編成されましたが、魔王さんのほうは……

「もちろん、こちらも準備してますよ」

―ああ、やっぱり。

「今回はけっこうバラエティに富んだ編成というか……そうですね、いい意味で期待を裏切るメンツになっていると思います」

―それは具体的には……?

「そうですねぇ、あまりはっきり言っちゃうと、今後の楽しみがなくなっちゃうと思うので、曖昧な言い方になりますけど……(腕を組む)。各地で活躍している元気のいい新人はもちろんとして、名前を聞いたら『えっ、ほんとに!?』と思うようなベテランも……」

―おお!

「正直、ベテラン勢を引っ張り出すのは大変だったんですけど、きっと皆さん期待してると思うと、ねぇ?」

―それはファンには嬉しいニュースですね。

「私が封印された後に、みんなだいたい就職したり、実家を継いだりしてたんですけど、頭を下げて、ね。『頼む! この通りだから!』って」

―魔王さんが自ら(笑)。

「はい(笑)。だってもうみんなそれぞれに生活や家庭がありますからね」

―でしょうね。

「中には500年前と変わってない奴もいましたけど。スライムとか」

―スライムさんはそういうタイプでしょうね(笑)

「ええ(笑)、でも、そういうのが逆にありがたいなって思いましたよ。さっきのベテランたちも、私が本気なんだって分かると『仕方ねぇな』って言ってくれて」

―それは魔王さんの人徳ですよ、きっと。

「そうなんですかねぇ……?」

―そうですよ。

「そうだと嬉しいんですけどね……うん……(噛みしめるように)」

―ところで魔王さんは、なぜ再び征服宣言を?

「うーん……いや、ノリって言っちゃうと軽く聞こえるかもしれないんですけど……」

―やはり魔王さんの悲願だからということでしょうか?

「……そうですね、なんていうかな、夢って言っちゃうと青臭く聞こえるかもしれないけど……こういうことって、たぶん人間でも、魔族でも、だれでも一度は考えると思うんですよ」

―はい。

「でも、それこそ家庭や生活だったり、あるいは病気や寿命とか、そういうそれぞれの都合で、諦めざるを得なくなる。それが悪いとは思わないんです。仕方のないことってたくさんあるから」

―そうですね……

「でも、私は、それをどうしても諦めきれないみたいで……うん」

―夢を叶えたいという気持ちを捨てられない、と。

「夢というか、わがままみたいなものですよ。1200年も生きていれば、何ができて、何ができないかくらいはわかります。それでもまだ、どうしてもやりたいことって、あるものなんですよ」

―なるほど……確かにそれは少しわかります。

「ええ。だから、なんていうか、やるなら全力でやってみようかな、と。全力でわがままを言って、それを支えてくれる仲間がいるなら、なんとかなるんじゃないかって……やっぱり青臭いですよね……?」

―いえいえ、そんなことは……少しはあるかもしれないけれど……

「あはははは(笑)」

―いや、でも、そういうのって、きっと大切なことだと思います。

「そう言って頂けると嬉しいですね……」

―頑張ってください。楽しみにしてます。

「ありがとうございます」

―では最後に、今後の活動について何かあれば。

「そうですね、ええと、まず手始めに、勇者さんたちのいる◯◯王国に、尖兵を送り込んで……だいたい100人くらい殺す予定ですね。それが開戦の合図です。そこからはまだ流動的なんですけど、部下や装備の配備だったり、勇者さんたち向けの宝箱や鍵の設置も並行して行う予定です。詳しいことはウェブサイトで逐次発表していくので、ぜひそちらをご覧ください。はい」

―本日はありがとうございました。

「こちらこそありがとうございました」

 

 

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