かつてパンク少年だったおじさんが語るアニソン
時期にしたらそうだな、今からおれが中学3年生とかのころだから、20年くらい前になるか、ってあれから20年も経ってんの!? 今冷静に計算してよだれ出そうになったわ……と、ロンTの袖で口を拭いながら続けると、それくらいの時期からメロディックパンクに火がついて、HUSKING BEE、BRAHMAN、BACK DROP BOMB、REACHなどなど、無数のバンドがひしめいていた時代で、おなじみのHi-STANDARDがMAIKING THE ROADというアルバムを発売したあたりが最高潮で、その後2000年を迎えたころ、急速にそのパンクの熱は引いていった。
先に挙げたバンドも解散したり再結成したり、あるいはあの頃と変わらず活動していたりと様々だが、そんなメロディックパンクブームと同様に支持されていたのがスカ・パンク、スカコアで、どんな感じかというとこれはスカとパンクを融合させた、ってそのまんまなんだけど、まあスカの裏打ちのリズムとメロディックパンクの速さや歪んだギター、あとホーン隊が加わったりといった感じで、具体的なバンド名を挙げるとPOTSHOTやKEMURIやSNAIL RAMPあたりが有名どころか。特にSNAIL RAMPのMind Your Stepはテレビでもガンガン流れてたから、知ってるひとも多いんじゃないかな。
POTSHOT - Be alive(PV) - YouTube
Kemuri - Positive Mental Attitude (PMA) - YouTube
Snail Ramp - Mind your step! - YouTube
で、おれは実のところ、それほどスカパンクは好きじゃない。いや、好きなんだけど、ドハマりするようなバンドはいなかったというだけで、普通に聴いてはいたのだが。
で、あれから20年を経て(20年か……)、今では体のあちこちが弱ったり、徹夜できなくなったりと確実に老化しているのを実感したりとさまざまな変化があり、またこれは自分が変わったのと、なにより世論が変わったことが大きいが「昔は必死に隠してきたけど、まあもうオタクでいいや……」と開き直ることができるようになって、ラノベもマンガもアニメも人並みには好きっすよと照れずに言えるようになって非常に楽である。
そんなおれがアニメを観る基準のひとつに、OP曲やED曲が良ければOKというのがあり(ついでに話も面白けりゃ素晴らしいね)、ふと気づいたのが、最近そういったアニソン(ここでいうアニソンはバンドタイアップを除き、アニメに使用された曲全般を指します)に、スカっぽいのがけっこうあるような気がする。
最近での有名どころは言わずもがなだけれど「タカラモノズ」。 これはほんともうモロに先述のケムリっぽい感じで、聴いていて実に楽しい。ちなみに最近ようやくキャラの名前と顔が8割くらいの精度で一致するようになりました。
「となりの怪物くん」のOPで使用されていた、戸松遥さんの「Q&Aリサイタル」、これは完全にスカパンクだ。ちなみに作曲したのはオリオンをなぞりまくることで知られているユニゾンスクエアガーデンのひとだそうで。
あとすこし昔になるけど、「WORKING!!」の一期のOPである「Someon Else」。これ最初はDVDの初回限定盤のおまけとしてしか音源が存在してなくて、おれはそのために1巻だけDVD買ったんだよなあわんわん。
あとこれは完全にスカかと言われるとそうではないが、裏打ちの部分があるので一応。みんなだいすき「けいおん!!」のEDである「Listen!!」。最初のほう(Aメロのあたり)とかスカコアっぽい。放課後ティータイムの曲はそのままバンドでコピーがしやすいので、楽器やってるひとはみんなコピーしようぜ。おれはDon't say lazyとNo, Thank you!しかコピーしてないけどな。
あと「うーさーのその日暮らし」のEDである「ラブミーギミー」。作詞作曲はうーさー氏がメンバーだから、ということからかは知らないが、おなじみsupercellのryo氏。これ大好きなんだけど、どうも話題になんなかったんだよな。いい曲なんだけどなあ。
こんな感じで、青春と呼ばれる時期をともにした音楽が、アニメとともに帰ってきているような気がして、なんというか「懐かしくて新しい」みたいな。なんか昔風ラーメンみたいに使い古された言い回しだけどね、これ。「昔風ってお前その頃のラーメンの味覚えてんのかよ」っていう。いやそれはいいんだけどさ、なんかちょっと得したっていうか、嬉しいんだよな、こういうの。人生に大きく影響を与えた音楽が、ちょっと違う形でまた会いに来てくれたみたいでさ。スカパンクって聴いてると体動かしたくなるし、なんか明るい気持ちになれるでしょ? それがスカパンクの いいところ。もし今回挙げた曲をいいじゃんと思ったら、ぜひ冒頭で挙げたようなスカパンクバンドの音源を聴いてみてほしい。
今回挙げた曲がアニソンらしいかっていうと「こんなのアニソンじゃねーよ」って言うひとのほうが多いような気もするけど、いろんなジャンルのよいところをボーダレスに吸収しちゃえる、ある種の節操の無さがアニソンのよいところだとおじさんは思っている。何してもいいから良い曲で、作品にあってりゃそれでオッケーっていう気楽さもね。オーバラップ文庫の「アニソンの神様」読んだら似たようなこと言ってて、せやなって思った。いや、最近のハードコア・パンクバンド界隈はね、素直に楽しめないのよ。なんかこういろいろあんのよ、ほんと。いちいち触れないけどさ。
それにしてもスカパンクがアニソンに、というようなこの流れっていつごろからなんだろう。今回はiTunesのライブラリにあった曲を挙げたけれど、おれが知らないだけでほかにもあるのかもしれない。もしかするとそのうち「これモロにメロディックパンクじゃん!」ってアニソンだって生まれるのかもしれない。ひょっとしたらもうあるのかもしれないけれど。あったらいいな。などと、モッシュもダイブもしなくなった、かつてのメロディックパンクとかハードコアとか大好きだったおじさんはしみじみ思うわけです。
これはスカパンクじゃなくてメロディックパンクとかパワーポップっぽくてやっぱり好きなんだけど、これもあんまり話題にならなかったな。みんなは歪んだギターや早くてうるさいドラムが好きじゃないのかしら。