豆腐

まだ夏じゃない

21:01

学生時代、定期テストの際に「お前勉強した?」「いや全然だわ」というようなやりとりをするのは日本のスチューデントならではの奥ゆかしさであるが、往々にして勉強してないって言ってたやつはそれなりの点数を取っており、もちろん一部の例外としてマジで全然勉強せずにレッドポイント倍点! キャバァーーン! みたいなやつもいたが、それはもうそういうやつだから別として、勉強しとらんと言ってたくせに90点とかあるいはそれ以上の点数を獲得してるのはなんなの? 謙遜なの? 裏切り者は吊るせ! となりがちだが、この「勉強してない」とか「全然できんかった」みたいのって当人はわりと本気でそう思っていて、というのはおれ自身がテスト毎にそう言っていたからで、これは勉強してないやつへの嫌味とか、あるいは同級生との心理戦などではなく、当然テスト範囲の復讐、違う復習はしているし、過去問は徹底的に繰り返し解いてその解法に誤りがないことを確認して、授業中に「ここテストに出るからな〜出るぞッ! 出るッ! ウッ!!」と先生が言っていた箇所などは特に重点的に偏執的なまでに復習をするのだが、「もし授業でさほど詳しく教えられなかった箇所が問題として出たらどうしよう」「この問題は解けるようになったけど単に繰り返し解いて暗記しているだけだったら応用問題で死んでしまう」などと考えてしまい「そもそもこのノートに書き写している事が間違っていたらどうしよう」「テスト範囲として聞いた箇所がおれの聞き間違いであったらどうしよう」というのはおれがチキンだからそう思っていただけかもしれんが、とにかくそうやって際限なく不安材料が湧いて出てきて、万全の体制で問題を解くために行っているはずの勉強が、逆に不安感を増大する行為になってしまうからで、そんな心持ちで復習しているとどれだけやってもどこかに大きな穴があるのでは? という疑念に押しつぶされそうになって、はたからみれば必要十分であっても当人はやべぇよ……やべぇよ……と思い込んでしまうようになって、実際にテストの問題がつつがなく解けたとしても何か騙されているんじゃないか、名前を書き忘れるとか、解答欄ズレてるんじゃないか等のとんでもない大ポカをしているんじゃないかと思ってしまうわけで、そういった強迫観念めいたものが最終的に「全然勉強してない……」という言葉を吐かせてしまうのであって、決して嫌がらせや自慢のたぐいではないことをどうかご理解頂きたく思うのだが、34になって脳の老化を如実に実感している今、学生のころにやったようなテストを受けたらこれはもう間違いなく壊滅的な結果になるのが目に見えていて、テスト後意気消沈しながら「どうだった?」と訪ねて「いや全然自信ないわー」とか言われて、数日後に戻ってきたそいつの答案が94点とかだったら確実におれのナイーブハートは砕け散って激怒、失望して二度と他人を信じられなくなり死ぬしかなくなるから、勉強してない勢は勉強はしたけど〜〜のでその結果勉強した・できたとは言い切れない、と正確に告白したほうが後々に遺恨を残さないですむのではないだろうかと思うが、おれの場合はそういった努力っぽいことをした結果が実らずに悪い点を取ってしまったときの予防線として勉強してないわーと言っていたような気もするので、やっぱり各々誰に気を使うことなく持ち場で勉強してないアッピールしていけばいいんじゃないっすか、おれはもう知らねえ。