豆腐

まだ夏じゃない

21:46

ふぐという生き物についておれが知ってることといえばテトロドトキシンという毒物を溜め込んでいてきちんと処理せずに食うとわりと死ぬということくらいだが、その蓄積した毒をふぐは生きてる間に使うことはなく、捕食者に食われてからようやく作用するわけでせめて引き分けに持ち込もうという意図なのか知らないがふぐサイドの作戦は誤っているのではと進言する次第であるが、そんな部屋に食うとヤバイふぐを試行錯誤の繰り返しののち可食部位を突き止め今や高級食材として流通しているし、アクションスターといえばジャッキー・チェンというように毒キノコといえばあいつだよねと広く知られているベニテングタケすらも地方によっては毒抜きをして食ってしまうと聞くし、過去に飢饉などがあってどうしようもなくて食えるものを探した結果そういう危ないものを食うようになったのかもしれんという憶測はできるが、それにしても日本人の食にかける情熱というものはキチガイじみていると改めて思うわけで、しかしベニテングタケは見るからに毒もってまっせという色合いだし、ふぐは何人も犠牲者出てるからやっぱやべーよこいつという共通認識があったと思われるが、そういうのを別にしてやはり理解できないのが世界で最初にウニとかホヤを食った奴で、ホヤの実物を見たことがあるなら分かると思うが初見であれを食いもんだと思ったのならそれは直前に食った変な草の薬効のせいだろうし、ウニなんて全力で「俺に近寄るな、触ると怪我するぜ………」とアピールしていて割ったら割ったで中から出てくるのはグロテスクな黄色いグズグズだし、どちらも食ったところで口いっぱいに「どうも海でーす!」という潮の風味となんとも形容しがたい味が広がるばかりで、今すぐ何かしら食わないと死ぬという極限状態でないと食う気にはならんのだが、というと、「それは新鮮なやつを食べたことがないからだよ(笑)」とか抜かす味覚障害野郎が湧いて出てくるわけで、あの独特の風味がよいと思うひとがいるのは百も承知だが、こちとらオホーツク海で湯浴みしてわりと日常的に超新鮮な魚介類を口にして育っていて、それでもウニやホヤについては30年以上経っても和解できていないという確固たる事実があるのでおそらくはウニ・ホヤサイドが絶滅するか、おれが死ぬまでこの冷戦は続くので、せいぜい貴様らは高い金を出してあのクッソまずいゲテモノを食ってろそしてせいぜい味の分かる人間のつもりで健康に生きて死ねと思うが、それにしても最初にウニを食ったやつはなぜウニなど食おうと思ったのかをずっと考えていて、これはTwitterでもいったことだが、たぶん罰ゲームだったんじゃないかなと思うわけで、つまり大昔に魚やら貝を取って暮らしていたころにその地方のリーダーの息子あたりが取り巻きを連れて日々暴虐の限りを尽くしていて、ある時にリーダーが子分のひとりにたいして「オメェその黒いトゲトゲ食えや」などと戯れ言に吐き捨て、その子分もここで断って問題になると内申点に響いたり、あるいはリーダーの親が支配する町における親の立場が悪化するのではと考えて、「ちょっと勘弁してくださいよ〜〜」と言いながらいやいやウニを叩き割って中身を口にしたらリーダー爆笑、取り巻きも媚びへつらって大笑い、これでいいんだ、これで……、と思ったら「アレ、先輩これウマイっすよ!?」「バカ言うなよてめーふざけてんのkウメーー!」となり、そうしてウニはその日から安寧の日々を喪ったのではとここに愚考するわけで、昆布食ったり波に揺られてフラフラしたり時々産卵したりするだけの平和な生活をしていたウニにとっては晴天の霹靂としかいいようがなく、その心中は察して余りあるもので、いつの間にかウニを応援する形となっていることに気づき驚きを隠せないが、でも友達や親とかを人質に取られてウニとかホヤ食わないと殺すとか言われない限り、この先もあいつらとは適度に距離を置いていきたい。誰とでも分かり合えるなどという幻想を抱くから、いつまでたっても戦争は終わらんのだ。