豆腐

まだ夏じゃない

22:53

水の中を歩いているような重みを感じながら俺は構内を歩き帰路に着く。吹きつける強風は容赦なく体温を奪っていく。見上げた空は奥行きのない闇に染まり星すら見えない。昼夜稼働し続けるプラントは海風のせいであちこちがサビつき、そこから伸びている無数のパイプはまるで巨人の血管のようだ。冬を前にして夜の気温は一桁。歩き続けているのにその寒さは厳しさを増し、指先の感覚が次第に失われていく。両手に息を吹きかけてささやかな温もりを取り戻しながら俺は歩き続ける。風は止まない。それどころかその激しさを増していくようだ。俺はこの街が、この風が嫌いだ。体温だけではなく、魂までもが削り取られていく気がするからだ。そしてそれはおそらく事実だ。一体どうして俺はこんな所にいるのだろう。疲れと眠気で頭の中身が泥になったような錯覚を覚えながら、俺はそんなことを考える。そもそもの始まりは

というような私小説だかなんだかっぽいなんかを友人のPCで書いて、PCに疎い友人とは言えども万が一ということもあるからとシステムフォルダの中にそれっぽいダミーフォルダを作って保存しておいたらなぜか友人のお父様がそのテキストファイルを発見したらしく「人生とは」「将来を見据えて」「夢とは」といった大変ありがたいアドヴァイスを記したファイルを俺のと並べて保存してくれたりするので、どうしても無理だと思う仕事を無理して続けて本当に頭や体がおかしくなってひとんちのPCで私小説書いてそれをそいつの親父に発見されて人生訓を頂戴したりしたくない人は、未来が怖いと思うかもしれないけれど自分のいのちを再優先に考えてクソみたいな仕事(のようでいてそうでないただの苦役)なんてぶん投げていいし、友人の親父はPCに詳しいか必ず確認したほうがよいぞマジでな、いやほんとに。