豆腐

まだ夏じゃない

23:10

以前も申し上げたようにわたくしはハンバーガーというものがどうにも好きになれなくてそれはハンバーガーショップというものが近くに存在しなかったからで当時ハンバーガーといえば17時を回ると半額になるパン屋で売ってた手作りだけどラップで一日くるまれて売れ残ってるもんだからバンズとパテとレタスっぽい何かが水分によってみっちりと密着した香ばしさのかけらもないものだったり、あとなんでそんな名前にしたん? あとパッケージの男は誰? という「夜霧よ今夜もハンバーガー(イカスぜ)」だったりしたわけで(知らないひとはググってみてください)、今思えばそういうものがハンバーガーの原体験となっているからマックとかのは逆に好きになれんのかもしれぬなどと考えたところで気に食わないのは変わりないが、気に食わないついでにいうとハンバーガーショップもないような町だから「それじゃ部活終わったらマックで待ち合わせしようぜ」というようなことなど当然なく彼女と宿題をしながらポテトを食べさせあったりなんてもってのほか、そんな破廉恥な行動はオホーツクという発展途上国では万死に値するぞと問うて回って出禁食らうくらいの覚悟はあり、またハンバーガーショップといったファストフード店と同様にファミリーレストランと呼ばれるものも一切存在せず札幌に越してきてはじめてドリンクバーというシステムと対面した時などはこれが先進国というものか、国の両親にもこの薄いコーラを飲ませてあげたかった……と滂沱たる涙を流して崩れ落ちたものだが、あれから数十年経った今はコンビニがいくつかと、名前だけは有名なラーメンチェーン店がポツンと出店したくらいで、相変わらず俺の故郷にはファストフード店なんてないし、ファミリーレストランもないし、だいたい何がファミレスだよ、休日の昼とかはともかく深夜は暇人どもがたむろしてるだけでファミリーなんていねぇしいたとしても明らかに頭脳の発育具合がよろしくなさそうなご家族しかいねぇじゃねーか、こんな場所に僕の両親を連れてこれるわけないだろ! そうさぼくの両親は地元ではとても有名な資産家でね、ぼくのパパとママは、あれ、父上と母上は、アレ……? 父さん……母さん……? 顔が思い出せない……? そもそも僕は誰の子供だったんだっけ……? あれ……????