豆腐

まだ夏じゃない

22:33

幼少より近所付き合いがあった男の子と女の子はともに成長し高校生くらいになり距離が近すぎるがためにお互いの気持に気づくことができず、しかしそれはそれで穏やかな日常でこのさきもなんとなくこの退屈な時間が続いていくのだろうと思っていたら第三者による干渉、具体的に言うと女の子が告白を受けてこんな事があったんだけどなんてさらっと言われて男の子はその場はあっそ、付き合えばいいじゃん? みたいな事を言っては見たもののどうにもモヤモヤするのはなぜだろうと悩んで悩んで親友に相談したらお前あいつの事好きなんだろ? なんて言われて何言ってんだよ! と思わず声を上げるも改めて考えるとこれまであいつが一緒にいたんだからこの先も当然そうだと思っていたけれどそんなわけはないんだ、俺はあいつの事が好きなんだ! と己の心理に気づいてご飯よーというお母さんにちょっと行ってくる! と言い残して彼女の家に走り、俺はお前のことが好きだ! これからも一緒にいてくれ! なんて息を切らしながら告白したら彼女は彼女で、もう、ずっと待ってたんだから! みたいなこと言ってふたりは幸せなキスをして終了、といったラブコメのテンプレのような人生を送る人間がこの世に果たして何人いるのかは知らんが当然俺にはそんなイベントなどなかったし、近所に住んでてかれこれ30年くらいの腐れ縁になる幼なじみはいるけれど俺と同い年の筋肉ムキムキガチムチメガネ野郎だし、後輩もいたけれど当然男でそのうち一人は自宅で大麻の栽培してパクられたし、一応先輩にあたる近所の兄ちゃんは俺んちに忍び込んであれこれ物色していたら帰宅した石垣家と鉢合わせして風のように逃げたけれど靴跡と指紋でバッチリ捕まったし、人生のシナリオなんてこんなもんよ。