豆腐

まだ夏じゃない

22:46

人間褒められたら大抵は気分がよいもので少なくとも褒めてぶん殴られるようなことはほとんどなく(まれに殺傷沙汰になることもあるやもしれんがそれは当人たちに元々問題があるのだろう)、褒め上手なひとといいうのは実際尊敬に値するわけで私もそのような人間になりたいものだが、元来日本語が不自由であり性格も決して良いとは言えず良いにしろ悪いにしろそれを素直に言葉にするのが苦手で自業自得ではあるけれどこれまでいくつもの無用な怒りや悲しみをひとさまに負わせてきてしまった、そういった自責の念に囚われてこのまま一生を終えるのかと思うとあまりにも切なく、これではいかん、人間やり直そうと思えばいつでもやり直せるものだと一念発起、どうにかしてひとを素直に褒められるようになりたいんだ、さしあたっては身近というか俺自身がそうである道産子を褒めるとしたらどのように褒めたらよいかと考えてみると、まず北海道といえばその雄大な自然は確かに他にないものでそれでは自然について褒めたらよいのかと思ったが、実際北海道に住んでいて広大な土地など捨てて掃いてまだ余りまくっているありふれたものであり、札幌近郊ならまだしもたとえば俺の実家があるオホーツク地方などで自然がいっぱいですね! などと言われたら、山と川と畑と牛くらいしかいねえしいっつも見てるもんだし逆にいえばそれはなんにもねえなこの僻地と言っているのかと皮肉として捉えられて、お前それ餌不足で冬眠しそこねた熊にも同じ事いえんの? と両手足を縛られて流氷の上に置き去りにされるかもしれないので自然について褒めるのはやめたほうがよいだろうという結論に至り、ではこれまたよく言われるように食べ物がうまいですね! と言った場合を考えてみると、確かに食い物のレベルは高いと思われるし比較的格安で入手することもできるのでこのへんが無難かとも思ったが、食い物うまいという人間はたいてい内地からやってきた観光客であり、彼らがここぞとばかりに食うのはカニやイクラやウニといった海産物ばかりであり、いくら他地域よりはなんぼか安いとはいえ道産子だって普段は普通にスーパーで買い物して普通のめし食っててイクラとかだけを日常的に食ってるかというとそんなわけはないし外からみれば安くても高級品には違いなく、偉大なる上田札幌市長であればともかく終わりの見えない不景気により今日を生きるのが精一杯な俺を含む大抵の道産子はこの成金野郎が、贅沢は敵だ! と平素より携行しているマチェーテを取り出して彼や彼女を切り刻んで熊の餌にしてしまうのは想像に固くなく、ではいままさに開催されている雪まつりなど冬季限定のイベントについてブラボーと喝采の声をあげたとしたらどうかというと、これまで何度も言ってきたように雪など道産子にとってはゴミ以下の障害物でしかなく逆鱗に触れまくりのタブーそのもので。そんなに雪が好きなら好きなだけ雪食わせてやるよとテーブルに括りつけられ死ぬまで口に雪を押し込まれてGLUTTONYの文字を刻まれブラッド・ピットモーガン・フリーマンが事件の解決に乗り出して最悪のラストを迎えることになるのは間違いなく、そもそもこれまで挙げてきた自然とか食い物は道産子というよりそのもの自体にたいする賞賛であって道産子を褒めるというのは想像していたよりも遥かに難しいと言わざるを得ず、まるで人間みたいですね! とか、日本語うまいですね! あたりが道産子の褒め言葉としては精一杯のような気がするがもし俺がそういう事言われたら100パー煽りとして受け取るだろうから道産子を褒めるのは諦めようと思う。