豆腐

まだ夏じゃない

20:45

中学高校等に進学した男子新入生たちは今ごろ遅刻遅刻ーなんつって登校初日にパンくわえて全力ダッシュしてたら道のカドから飛び出してきた女の子とぶつかった結果中身というか意識が入れ替わり、あいててて……あれっ俺が! あたしの体が! なんてことが起きないかなーと期待に胸とちんぽをふくらませているころだろうが、こういうのは自分と相手が比較的健康な美男美女でないとその後の少女コミックあるいはエロマンガ的な展開は期待できず、極端な例を挙げるとパンをくわえながら道の角でぶつかった相手が、終戦を迎えた混沌とした日本で幼少期を過ごしその後両親の借金のカタとして村長の息子である齊藤秀と望まぬ結婚を迫られ、しばらくは姑であるウメにいびられるも現場を目撃した茂はウメを怒鳴りつけ今後一切このような事は許さんぞと喝破し、それを機に自分をただの借金のカタなどではなくひとりの女として見てくれる茂に心惹かれるようになりふたりは近所でも有名な鴛鴦夫婦となり、茂はやがて板金業をはじめ元々筋がよかったこととたまたま村に来ていた大手企業のお偉いさんに気に入られ会社を立ち上げ、高度成長期の勢いに乗った茂は各地に支店を持つ事業家となるも工員や家族への愛情は変わらず周囲から厚い信頼を得て、一郎と二郎という子宝にも恵まれ茂たちは幸せを約束されていたかのように思えたが、突如として病に倒れた茂は一郎二郎の成人を迎えてすぐに他界してしまい悲嘆に暮れる日々を送っていたところ、さすがは一代で財を成した齊藤家の息子たちである一郎二郎が茂に代わって社を継ぎしばらくはその若さから関連企業に甘く見られていたものの茂譲りの手腕を発揮するようになるとこれまで以上に斉藤板金の名は広く知られるようになり、またこの頃ふたりの息子たちはそれぞれに結婚し子をもうけ、穏やかながらも幸せに歳を重ね、孫やひ孫の顔を見られるなんて思いませんでしたよ茂さん、あなたのおかげです、と日々感謝しつつ暮らしていた斉藤トミさん(87)であった場合、年端もいかぬ子供と近い将来大往生ですね……と葬儀の参列者が揃って口にするような老人が入れ替わってしまうことになりハイリスクローリターン、というか下手すると衝突した時点で死ぬ可能性も十分あるので、パン咥えダッシュは極めて危険な行為であり、敢行の際は細心の注意を払わねばならんことを学生諸君は各位留意されたし。

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