豆腐

まだ夏じゃない

参考図書とアルカディアと仏壇

実家の自室は茶の間とうっすい壁一枚挟んだだけでノックのひとつもなくドアバーン開けられるし音もほぼ丸聞こえでプライバシー7割減、というか思春期の男子学生が劣情を催す類の品と接する際は細心の注意を払う必要があって、当然そのような品々の収納場所については机の引き出しの奥といったド定番の場所を筆頭とし、あるときはパソコン持ってないのに毎月買っていたベーマガの束に紛れさせる、本棚の裏側のわずかなスペースに押し込むなどしていたが、母親という生物はその手の品を捜索する嗅覚が鋭く、今思えばたぶんバレていたのだろうなと思うが、そのような強制家宅捜索と隣合わせの生活のなかでわずかでも信頼性の高い隠蔽場所を探し行き着いた場所があり、未だにどういう理由からかなのかはわからんのだが俺の部屋の片隅には水道の蛇口とシンク、それとその上に食器類を収納する扉付き棚があり、さすがに蛇口をひねっても水が出たりしないようにその機能は殺してあったが、とにかく俺の部屋にはお台所としての設備が存在しており、俺はそのシンクにテレビを置き、棚には学校のテストプリント使わなくなった教科書などをギッチリ詰め込んで収納するスペースとして活用しておって、俺が行き着いたのはその棚の更に上、天井と棚との5センチあるかないかのスペースで、テレビなどのオブジェクトにより物理的なアクセス性に乏しく、また俺の身長でベッドなどの上に立った上でさらにつま先立ちしないと届かぬような場所で、完全とは言えないだろうがこれまでの場所に比べたらかなりの高信頼性を秘めており、いい加減なデータセンタよりよっぽど上等な場所であったと今でも思っているし、当時の俺もアルカディアはここにあったと確信して、当時の俺が著しく性的な興奮を覚えた各種よりぬき参考図書映像類をそこに保管していたのだが、それからしばらくして俺は進学で地元を離れさらに後に就職で札幌を離れ、心身ともにボコられて札幌に戻ってぶらぶらと死んでいないだけの日々を送っていたら父が病で入院し、その父が最後まで戦い抜いて御霊となり旅立ったあと、俺の部屋は仏間兼母の趣味である園芸のための部屋として改修されて、今では帰省しても俺の城は当時とまるで違う空間となってしまっていて、いくぶんの寂しさはあるけれど使える場所を使わずにおるのも勿体無いし父の居場所や猫の昼寝場所として使われるならまあいいかなと思うが、懸案事項がないわけでもなく、それが先ほど申し上げたアルカディアスペースのことであり、札幌に出てくるときによりぬきエロマンガエロ本エロビデオの類は処分、あるいは俺とともに引っ越したとは思うのだがいかんせん昔のことゆえ確証がなく、仮に当時の俺がどうせ俺の部屋だしあんまり神経質にならなくてもいいやと適当に後処理をこなしていた場合、部屋の改修時にアルカディアスペースも取っ払われたためそれらのエログッズが発掘されている可能性が大いにあり、作業を行った大工さんたちや母に当時の俺がどんなジャンルの本でちんぽしごいていたかが俺のあずかり知らぬところで詳らかにされていたことになるわけで、事が事だけにこの歳でも、というかこの歳だからこそ、あのスペースから何か出てきましたか……? とは聞きにくく、またそこに何かがあったからかそれともサイズ的にちょうどピッタリだったからか知らんが父の仏壇は元アルカディアスペース直下に設置してあって、帰省して父に手を合わせるたびにかつてそこにあった性欲増長フルボッキシコリングエロマンガなどの事が頭をよぎって、あれらは果たしてどうなったのかと仏の視線とか無関係にとにかく頭上が気になって上の空なことこの上なしよ。

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